前回 GO-AROUND のお話をしましたが、今度は DIVERT してしまいました。
DIVERT (ダイバート)とは
日本語では代替着陸とでもいうのでしょうか・・・日本人のパイロットどうしでも代替着陸なんて言ったことはないですけどね。
お天気やその他の理由で当初目的地としていた空港に着陸できず、目的地以外の空港に着陸することです。
どんなときやるの?
ほとんどの場合はお天気にかかわる問題です。
突発的な雷雨とかなら30分もあれば収まるのでその分燃料積んでいって上空待機すればいいのですが、霧とか低い雲が立ち込めだすと問題です。
また、目的地の空港で事故などがあり滑走路閉鎖になったりとか、機内急病人や機体に異常があって緊急着陸を要する場合などです。
日本の場合は、お天気が影響する場合は出発前に航空会社から事前に案内があると思います。
俗にいう「条件付き運航」です。万が一ダイバートしても文句言わないでね、という念押しのようなものですね(笑)。
しかしここベトナムではそんなことしません。お客様には何の案内なしに飛んでいきます。
パイロットはどんなことするの?
着陸が難しいお天気だったとします。
微かな期待にかけて行った着陸進入が無駄に終わり、あゝ無情のゴーアラウンド・・・。
飛行場の上に上昇し上空待機となります。
まず、管制官にお天気の再確認。そして何分待機できるか燃料の確認。
回復の見込みが怪しそうですと、ダイバートする予定の空港のお天気も確認。
待機しながら副操縦士君と相談。(次のスケジュールやら勤務時間の皮算用等々・・・この皮算用はだいたい外れますが 笑)
そして代替空港までの経路をコンピューターに入力しダイバート準備完了。
パーサーを呼んで状況説明
本当に残念そうな寂しい顔するので、ここはオヤジギャグで場を・・・白けさせます。でもベトナム人は面白くなくても笑ってくれますよ (笑)
最後に乗客へのアナウンスして、その時を待ちます。
回復の見込みがあるときはかなり粘りますが、そうでない時は早々に切り上げてダイバート決定。
管制官に飛行許可をもらって代替空港に飛んでいきます。
で、今回は何があったの?
今回は想像もしていなかった天気でした。
予想では雷雨が過ぎてお天気良好になる予定でした。現況も既に良好と報じられていましたしね。
ところが、目的地は標高600メートルの飛行場。日没共に低い雲が立ち込めてきました。
そこは小高い空港をよく知っている九州育ちのパイロット、それも見越して燃料も余分に積んでいったのです。
そして夜なので滑走路灯や進入灯などの明かりでなんとか見えるだろうと「たかをくくって」気楽に進入。
迫りくる進入の限界高度・・・あれ?やばくね?・・・あ~何も見えない・・・また ゴーアラウンドだ!
管制官曰く、「2時間は回復しそうにないよ。」
進入中あっという間に悪くなったようでした。
30分ほどダイバートの準備をしながら回復を待ってみましたが、益々濃くなっていく雲。
ふと機上のレーダーに目をやると怪しげな画像が・・・代替空港のニャチャン空港に積乱雲が迫ってきてる。
もう一つの予定代替空港、出発してきたタンソンニャット空港は雷雨の真っ只中、20機が上空待機
こりゃいかん!さっさとニャチャンにダイバートしよう。
考察
以前のブログ(パイロットの目線で見るホーチミンのお天気)でお話ししたように、ベトナムの天気予報は日本のそれと比べると精度が低いのですが、もろにそれに引っかかってしまった例です。
日本で飛んでおられる方からは、気象の勉強が足りないからだよって笑われそうですが、熱帯地方の雨期の天候は女心や秋の空よりコロコロ変わりやすいのです。
本当にどれも難しい・・・(笑)
とはいっても全ては機長の責任。
「We would like to apologize for this in convenience.」(これ便利なセンテンスです。会社あまり apologize するなとは言いますが・・・)
その後ニャチャン空港で再給油して3時間後、満点の星空の下、本来の目的地ブンメトート空港に無事に着陸できましたとさ。
最後まで読んでいただきましてありがとうございました。
コメント
毎回のブログ配信楽しみに拝見させていただいております
ヴェトナムへは若いころから数回旅行に行きました。
ホーチミン、ハノイ、ダナン、ホイアン 旅行には良いところですね
機内英語も本当に参考になります。
今後ともよろしくお願いします。
丸山様
いつもご覧いただきましてありがとうございます。
コロナが終息しましたら是非またお越しください。
ニャチャン、ダラット、フエなどもお勧めですよ。
今後ともよろしくお願いいたします。
ダイバート。ようやく到着したかと思ったときに、着陸できないとなったら悲しいですね。でも、命に係わる事なので乗客も納得してくれるでしょうけどw
ニャチャン、ダラット、フエ、ホイアン、フーコック、コンダオ、もうベトナムは行きたいところだらけです!
以前、日本→タンソニャット→ニャチャンの旅行をしましたが、航空券の検索サイトでは
タンソニャット着 12:00くらいで、
タンソニャット発 16:00くらい(ニャチャン行きの国内線)
と言うチケットしかHitしませんでした。
4時間も待ちたくなかったので調べると、
タンソニャット発 14:00くらい(ニャチャン行きの国内線)
と言うフライトがありました。
(すべてVNエアです)
でも、どのように検索方法を変えても14:00のチケットはHitしません。
そこで思ったのは、国際線から国内線の乗継は、ギリギリなのはだめなのかなあ?と言う事です。乗継の時間制限とかあるんですか?
機長さんに聞く質問ではないとは思うのですが、ご存知でしたら教えてください。
余談ですが、自分は割高になったんですが別々にチケットを購入して、乗継もなんとかできました(時間に余裕はありませんでしたがw)。
コムタム様
いつもありがとうございます。
飛行機好き、旅好きのお客様の中には「ダイバート経験したいです」って方もいらっしゃいますけどね(笑)。
ご質問の件私も分からないですね。でも乗り換えについては余裕を持っていた方がいいと思います。フライトが遅れたり、入国審査に時間かかったり・・・
早着した場合は国内線ターミナルで、早い便に替えられないか聞いてみてください。運が良ければ変更してくれることもありますよ。
こんにちは!はじめてコメントさせて頂きます。やはり気候の変動の激しい東南アジアでは、ダイバートは多い方なのでしょうか。ベトナムでパイロットを目指しているのでさまざまな情報を聞きたいです!