パイロットの目線で見るホーチミンのお天気

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パイロット
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2020年6月15日 午後12:24、ホーチミン タンソンニャット国際空港におきまして、ベトナムの LCC Vietjet Airが雷雨の中、着陸に失敗し滑走路を逸脱しました。
幸い死傷者はなく、全員無事とのこと。
これから事故の詳細が明らかになると思いますが、これを機会にパイロット目線で見たホーチミンのお天気のお話しです。

 

ベトナム南部(ホーチミンを含む)天気

ベトナム、特に南部は高温多雨で、熱帯モンスーン気候に属しています。
日本のような四季ではなく、乾季と雨季の二季しかありません。
年間を通して暑いのですが、最も暑くなるのが季節の変わり目の、4月から5月で40℃近く上がることもあります。

1. 雨季:5月 ~ 10月
午前中はブルースカイのいい天気です。気温もグングン上がっていきます。
ランチタイムあたりから空模様が怪しくなり、強い日差しの間にそびえたつ積乱雲がの卵たちがあちこちに見えてきます。
早ければ午後1時前には最初の雨がが降り出しますが、ほとんどが数十分程度のスコールです。
エネルギーをたっぷり貯めて降る夕方近くの雨が最強で、気温も一気に10℃くらい下がります。
そうすると夜はエアコンが必要ないくらい爽やかな天気です。
熱帯地方ですが日本の夏より過ごしやすいと思います。
気温の上下に雨が加わるので、体調管理にお気を付けください。

2. 乾季:11月 ~ 4月
10月になると次第に雨が少なくなり、晴れる日が増えて乾季に移行します。
旧正月(ベトナムでは ”テト”と言います)を過ぎますと、安定した晴れの天気が続き、最高気温がどんどん上がります。ほとんどん雲が発生しない為、夜は放射冷却し早朝20℃近くまで下がって驚く方もいらっしゃいますね。
旅行でお越しなるのでしたらこの時期をお勧めします。雨に悩まされることなく観光、買い物ができます。
ただ非常に太陽光が強く、直射日光を浴びると痛みを感じることもあります。対策を施さず30分も浴びていると皮膚が赤くなってきます。お気を付けください。

 

ベトナムの天気予報

テレビやサイトで天気予報はやっていますが、これがあまり役に立たないんです。
日本のように気象衛星やAMeDAS(アメダス)を使って細かい予報はしていません。また、天気図(地上も高層も)見たことがありません。
日本の天気予報本当に素晴らしい!

ベトナムの雨季は前線を伴った雨ではなく、所により大きな積乱雲(入道雲)が発生し、1時間前後の強いスコールが降ります。そのため、いつどこで雨が降るとはなかなか予報できないです。

パイロットが使う空港の気象予報も「午後1から午後5時の間に時々強い雷雨が降る」程度のデーターなんです。
う~ん・・・雨季の最中、午後の4時間もあれば空港付近のどこかで雨も降るよなぁ。ほぼ経験値の予報ですね。
今日は一日中は晴れと予報されていたのに、午後から突然降りだして予報が変わることも・・・予報じゃなくて実況だろうとツッコミを入れたくなりますが、自然が相手ですので・・・。

 

積乱雲とは

小さな水の玉が、地上で熱せられた上昇気流で空高く持ち上げられ冷えて氷になります。
この氷が重くなって溶けながら落ちて、地上に近づくとまた上昇気流に吹き上げられて凍る。
これを繰り返して氷も少しずつ成長していきます。
雲の中は氷と水が入れ混じって上昇気流と下降気流が渦巻いてます。これが積乱雲です。成長が活発な時は、飛行機の上昇速度より早くそびえたつこともあります。

地上の気温が下がりはじめ、上昇気流が弱くなると成長しきった氷たちが一斉に地上へ溶けながら落ちてくる。
殆どの氷は溶けて豪雨となり、溶け切れなか氷は雹となって落ちてきます。
これだけでも厄介なのですが、この時一緒に周りの空気も引っ張って地上に叩きつける。これが突風となり飛行機にとって深刻な問題となります。

 

その時パイロットは?

飛行機に搭載されている気象レーダーで、遠くから様子を伺えます。そこで各々の駆け引きが始まります。
スピード上げて積乱雲がかかる前に着陸を試みるか、スピードを下げて通過を待つか、搭載燃料やほかの飛行機の兼ね合いも考えて(でも自分が一番)最善と思われる手段を選びます。

通常は空港の上にこの積乱雲があり豪雨となっているときは着陸は試みません。
滑走路上には水が溜まりタイヤが滑りやすくなっています。そこに突風が吹くと飛行機は簡単に流されて制御が困難になります。幅45m~60mの滑走路は狭いのです。

しかし積乱雲がかかる直前、間に合うかもしれないと進入を開始することがあります。ここに危険が隠れています。
順調に滑走路の端まで進入してきた途端、土砂降りが始まり、ワイパー作動さても強雨のため滑走路がぼや~としか見えなくなる。風向も風速も大きく変化。ここで無理をすると事故に繋がり兼ねない。
「ゴーアラウンド!!」パワーレバー(車でいうアクセルですね)を一杯入れて再上昇することになります。
幸いこの30年私はこれを経験したことないんです。「ベトナムに10年もいて?そりゃラッキーだね。」よく笑われます。神様、仏様いつも有難うございます。

 

その時市内では?

雨季の最中外出していますとスコールによく遭遇し、その前兆を感じることができます。
雨が降り出す前に生暖かい強めの風が吹き出し、露店のおばちゃんが店をたたみだし、気の早いバイクのライダーが雨合羽を付け始めます。生活の経験から雨の降りだしを感じているのですね。

そうしているうちにあなたの後ろから轟音と共に雨が追っかけてきますよ。雨の境目が認識できるくらいはっきりわかります。近くのカフェにでも避難しましょう。長くても1時間くらいです。

 

まとめ

パイロットには危険ですが、旅行中スコールに打たれるのもまた楽しからずや。
乾季がお勧めと言いましたが、雨季も楽しいですよ。
皆様のお越しを一年中お待ちしております。

 

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