A321 エンジントラブル?

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パイロット
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台風渦のエンジントラブル

先日のベトナム中部のダナン付近に台風が上陸しましたが、よりによってそんな時フライトが入りました。

更によりによってそんな時エンジンが不調に・・・

なかなか聞けない、気の小さい機長の心境のお話。始まり始まり・・・

 

それは離陸時から始まった

今日のフライトは1本のみ。クルーは昨夜のフライト同じ(宿泊でした)。航路上に台風は来てるが勢力も落ちてる。
コロナ渦のサービスは簡易的なものだけでさっさと終わるはず。2時間足らずのフライト、らくちんらくちん。
20分早着狙ってさっさと帰りましょう。

というわけで、10分早くドアを閉めて、コパイ君が鮮やかに離陸・・・ん?
エンジンの回転音が揃っていないような・・・不協和音。
計器を見てみると、VIB(エンジンの振動を示す値)が3.5。普通は0.1とか、古いエンジンでも 1.0位。
5を超えるとちょっとやばい。

離陸出力から上昇出力に絞ると、2.5に落ち着いた感がある。

気の小さい機長の心境・・・バードストライクは無かったよな、取り敢えず様子をみてみるか。

 

ダナン上空 36,000FT

私、あまり高い高度好きじゃないんですよね。
ベトナム上空って日本みたいにジェット気流があるわけでもないのですが、弱い風が入り乱れて、高いところは結構揺れるのです。
しかし今日は台風が接近してますし、いつもより高め 36,000FT (11,000m)飛んでいました。
揺れもそれほどなく、よしよしと思いながらふと先ほどのVIBを見ていると・・・。

値がどんどん増えていきます。3を超え、4を超えてきました。
コパイ君に関連するチェックリストを確認させて、私はマニュアルで再確認。

そうこうしているうちに、とうとう5を超えてさらに上昇しようとしています。

気の小さい機長の心境・・・心臓はドキドキ「俺、これ初めての経験だわ~」

 

30,000 FT まで降下

当該エンジンの出力を絞る為、取り敢えず降下。
「30,000FTまでの降下許可をもらって」と、コパイ君に。まだ新人の彼、声が上ずっていたのか管制から「手伝うことありますか」と聞いてきました。コパイ君ちらっとこっちを見るので「のーさんきゅう」。

降下中はエンジンの出力が下がり、VIBも5を下回ってきました。
しかし 30,000FT (9,100m) に達すると高度と速度維持するためにエンジンの出力が上がります。
それと同時にVIBもまた5を超えました。

気の小さい機長の心境・・・あ~ダメか。出力下げるしかないか。嫌だな・・・

 

当該エンジンの出力を絞ります

マニュアルによると、エンジンへの着氷が認められない場合は、VIB が5を下回るまで出力を絞りなさい。
絞ってもだめならエンジン止めなさい。

着氷は無い!では片方のエンジン絞りますか・・・ゆっくり、ゆっくり推力レバーを絞っていきます。

5を切ったところで止めるとまた上がろうする。更に絞って様子を見る・・・半分くらい絞ったところで、お!落ち着いた。

落ち着いたけど、万が一の為コパイ君ともしも談義。エンジン止まった時の確認します。
高度は何処まで降ろすとか、どこに着陸するとか、管制にはこう言ってね~とか。

気の小さい機長の心境・・・なんかワクワクしてきたぞ、アドレナリンが出てきたか?(笑)

 

パーサーとお話し

悪天域も過ぎて青空が見えてきたところで、ピンポーン!パーサー呼んで状況説明。
「エンジンが変な音してるけど、このままホーチミンに向かうね。万が一の時はダナンに降りるから」

気の小さい機長の心境・・・笑顔、笑顔。

 

無事着陸

降下するときはエンジンの推力は殆どアイドル状態で降りますので、ほとんど影響なし。
試しに、絞った推力レバーを元の位置にセットすると、何もなかったように通常状態になり、早朝のホーチミンに到着。

速度を落としたせいで20分早着はできませんでしたが、定刻より10分早く着きました。

気の小さい機長の心境・・・よかった、よかった。神様仏様感謝でございます。

 

さいごに

早着の、のんびりらくちんフライトの筈が、緊張のビクビクフライトになりました。
気の小さい私目はクルー達に感づかれないようにドキドキしておりましたが、飛行機を壊すことなく、怪我人もクレームもなく、安全に、10分早着。

無事これ名馬であります(笑)

あ。。。レポート提出しなきゃ。これが一番嫌(涙)

最後まで読んでいただきましてありがとうございました。

 

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